小麦わらが装飾品に大変身

ヒンメリスターターキット

井野農園との出会いをきっかけに私たちは宮崎でも農薬を使わずに小麦が育てられていることを知りました。宮崎で小麦を育てることの苦労と挑戦の日々、そして井野さんを支える人々の存在。いつしか私たちも井野農園をはじめ宮崎で麦を育てる人々を応援したいと思うように。商品開発やイベントを通じて宮崎産小麦の認知活動に取り組んできました。

小麦わらの再利用を考える

収穫する時期の迫った小麦は背丈が1メートルほどの高さがあり、全体が黄金色に輝いています。その麦の穂が風になびく様はため息が出てしまうほど綺麗。
立派に育つ小麦ですが、基本的に食用として収穫されるので使われるのは穂の部分だけ。穂に詰まった中身は小麦粉などに加工され、それを私たちはパンやうどんなどの原料として使っています。

こうして残されたわらの部分は、サイズも穂に比べて長く、その量も多い。食べることができないため使い道が限られてしまいます。むやみに燃やすと大気汚染や健康被害を招く恐れもあり、自治体によっては処分の仕方が厳格に定められているところもあります。そのため一般的には家畜の飼料や敷きわら、堆肥の材料として再利用するケースが多く見られます。

食用としての小麦を知っていただくことも大事ですが、同時に発生する麦わらをもっと有効活用できる手はないか…地域資源の活用を活動の主軸に置いている私たちはそう考えていました。

そんなとき、あるスタッフが見つけた「ヒンメリ」という存在。そのときは誰しもがはじめて耳にする名前でした。

ヒンメリは麦わらでつくるフィンランドの伝統的な装飾品。幾何学的な多面体を一筆書きの要領でつなぎ合わせてつくっていくもので、幸運のお守りとして収穫祭やクリスマスの装飾に使われています。吊るしてゆらゆら揺れる様子を眺めているだけでも癒されます。木漏れ日や照明から生まれる影がとても幻想的に映るのですが、そのおしゃれな見た目と誰でもつくれるという手軽さにスタッフは興味津々。なによりも材料が麦わらというのですから、これを使わない手はない。さっそく私たちは動き出しました。

宮崎産の小麦でつくるヒンメリ

ヒンメリという方法は思いつきましたが、いざつくるとなると誰もが初心者。一度つくり方を習いたいと思ったところ、なんと幸運にも宮崎でヒンメリを普及させている方がいるではありませんか。その方とは「ヒンメリ そらの音」を主宰している徳留ひと美さん。ヒンメリに魅了され、つくり方を独学で習得し、現在ではヒンメリづくりのレッスンを開いています。

私たちは徳留さんにヒンメリの相談に加え、宮崎で農薬を使わず小麦を栽培している農家さんがいることを話ました。徳留さんはこの話に興味を持ってくれただけでなく、井野さんにもぜひ会いたいといってくれました。そこから井野農園での麦踏みを一緒に体験させていただくなど交流がはじまりました。

徳留さんという力強い味方ができたことで快進撃がはじまります。これまで宮崎の小麦の周知も兼ねて、ヒンメリに関するワークショップやイベントを数多くおこなってきました。最初は宮崎産の小麦はもとよりヒンメリのことも知られていませんでしたが、数を重ねるごとに徐々にその双方の認知度が上がっていくのを感じました。開催したイベントはいずれも好評で、難しそうな見た目の割に簡単につくることができ、熟達者にもなれば幾何学模様が幾重にも連なったヒンメリをつくることができる。その魅力にはまる方が出てくるのを何度も目にしました。自宅に飾った写真を送ってくださる方もいました。

そして、地区あつめでは宮崎の麦を知ってもらうこと、麦わらをヒンメリという装飾品に変身させるという、これまでとは違った方法を知っていただきたく「ヒンメリスターターキット」を試験的に製作。キットの中身は材料となる宮崎産の小麦わら、製作するための針と糸、手引書となる「一筆書きでつくるヒンメリのつくり方」が入っています。ヒンメリワークショップと並行して試験販売をおこなうと、参加者が「自宅でつくってみます!」と購入されていくパターンがほとんど。

みなさんもヒンメリをつくってみませんか? その際は材料をぜひ宮崎産の小麦わらで。
ヒンメリをつくる時間は自分と向き合う時間。自然からの贈り物で、優雅な体験はいかがでしょう。