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日々の地区あつめ

われら地区あつめ隊の、めくるめく採集記

2018/09/18

その男ブランジェ 心の豊かさ

宮崎市加江田の海をながめる丘にある「森のマドゥ・パン」に行ってきました。オーガニックな材料にこだわる天然酵母のパン屋さんです。

14年ほど前に長野県から日南市飫肥へ移住しパン屋を開業。「天空のカフェ ジール」さんの隣の敷地にご自身たちで宇納間(うなま)からの解体移築をおこなうこと約5年、昨年の1月に工房をひらきました。

壁の中にはわらのブロックが入っていて、その上をどろで固めて漆喰を塗っています。いわゆるストローベイルハウスです。改築はまだ途中で、休みの日などに知り合いやその子どもたちが手伝ってくれるのだとか。「景色がごちそうです」と店主が言うのもうなづけるロケーションに位置しています。

この日はちょうどパンづくりの日で忙しいさなかでしたが、素敵な笑顔で店主が応対してくださり、お話をうかがいました。店主はパン職人(ブランジェ)でもあります。

ーずいぶんオーガニックにこだわっているのですね。
「食材が信頼できない時代というか、農薬や化学肥料、添加物などの不安を常日ごろからみなさん受けています。それを考えて有機、肥料さえ使わない自然栽培、トレーサビリティがきちんとしているなど、信頼できる食材を使用しています」

ーなるほど、安全な食材ですか。
「安全は重要ですが、オーガニック食材の持つ生命力は格段に差があります。うまみも深いんです。おいしいものをつくるというアプローチをとっても有機栽培の食材が良い。おいしく安全にですね」

ーどんな人に購入してもらいたいですか?
「子どもに安全なものを食べさせたいと思うお母さんが購入してもらえばいいですね」

ここで、お客さんが訪れて中断。

パンを頬張り、「おいしー」とグーのポーズをつくったのは、ニューヨークからやってきたピーターさん。サーフィン旅行で近くのゲストハウスに宿泊中なのだとか。静岡市から観光中の友人と一緒に店主たちとパチリしました。

ー趣味はお持ちですか?
「俳句を20年やっています」

ーパンをつくりながら一句浮かんだりするのですか?
「いや、それはないです。もうパンづくりだけに集中していますから」

ー俳句とパンづくりは通じるものがありますか?
「俳句は瞬間芸術といいますか、一瞬をとらえるものです。パンづくりも天然酵母が育つ瞬間を見究める、成形するときの見切りも重要です。そんなところが通じているでしょうか。なんかかっこいいこといったなぁ俺」
と照れ笑う店主。

ー今後の夢を教えていただけますか?
「こんないいところで少量生産だけどパンを焼けて、生活ができる、それが実現できている。このまま自然に育ってゆっくり暮らせていければよいです。自分たちがつくったものを自分たちで食べたときにおいしいね、と言えるのがやっぱりうれしいですよ」

ーおすすめのパンを教えていただけますか?
「秋の新作ゾルバザブレッドです。ピスタチオやラムレーズン、イチジク、有機クリームチーズなどを入れています」

ーゾルバ?
「ギリシャの作家ニコス・カザンザキスの小説『その男ゾルバ』の主人公をなぞって名づけました。知性で生きてきた教授が、下級階層を生きるゾルバに出会い、人間の根底にある情熱や楽しみ、生きること、愛することが心の豊かさなんだと気づく物語です」

ーそのゾルバからきてるんですね。
「見た目が豊かでおいしさを出しました。ぜいたくというか人生の中の豊かさ、生きるってマジメだけじゃないですよ、と表現しました。そういう沈黙のメッセージがこのゾルバザブレッドには込められています。ほんとかよ?でもほんとです(笑)」

ーははは!
「パンの見た目の派手さを見て食べてもらう。食べるとこういう味なのかと驚く。外はハード系ですが、中は柔らかく遊び風の合体です」

あとで食べてみると、たしかに外は固めでどっしりとし、中は柔らかく甘くてぜいたくなおいしさでした。後味もよろしいです。

ーご協力ありがとうございました。
「こちらこそ。おいしい記事を書いてください」

ーはい、おいしい記事を書きます(笑)

と、ここでマドゥ・パンのスタッフさんが一言。

「キジは書くものではなくこねるものですよ」

なるほど、パン屋だけに。これは1本とられました。おあとがよろしいようで。

◆森のマドゥ・パン
住所:宮崎県宮崎市加江田6261
TEL:0985-86-8511
営業日:金・土・日(11:30〜18:00)

この記事を書いた人

えいさん

3年前に旅行したときに出した自分宛のハガキが先日、自宅に届いていました。郵便屋さんに見られるかと思うと、ちょっと照れますね。★★★ 地区あつめ隊のあつめる係。 イチロー選手の引退により、ぽっかり空いた心の穴を埋めるべく、夜は焼酎で酔いがまわり、昼は宮崎市内の地区をまわり、情報をあつめています。オレンジのワーゲンバスが市内を走っていたら、左ハンドルをにぎっているのは、きっとぼくなのでお気軽に手をふってください。

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